他人の価値の影響
人間が『周囲の影響を受けて自分でも知らない間に価値観が変化してしまう』ということは実際に起こりえるのか。それを確かめるために2011年にある実験が行われた。
この実験では、被験者として若い男性を集め、女性の写真を何枚かみせて、それぞれどれくらい魅力的かを7点満点で評価してもらった。
まず最初に一人で女性の写真をみる。写真はコンピューターの画面上に次々と出され、それを見て採点をしていくという流れだった。その後、他の被験者がどういった採点をしたのかが知らされたが、ここで仕掛けがほどこされていた。本当の他の被験者たちの採点ではなく、プログラムが自動的に生成した評価結果がコンピューターの画面に表示されただけだった。場合によっては、本当の点数より2~3点高い点数や低い点数が表示されるといったこともあった。
そしてもう一度同じ女性の写真の採点を行ってもらったが、2度目の採点はコンピューターによる『偽の点数』の影響を受け明らかに採点が1度目と変わった。
また脳内の反応にも特徴的な変化がみられた。『偽の点数』が高かった女性の写真をみると被験者の脳の報酬系のはたらきが活発になり、反対に『偽の点数』が低かった女性の写真をみると脳の報酬系のはたらきは不活発になった。一方、『偽の点数』を一切知らされず2度目の採点を行った被験者の脳の報酬系の反応は最初の採点時と同じだった。
類似の実験は他でも行われ、同様の結果が得られているが、他の被験者の点数を知らされた瞬間の脳の報酬系のはたらきを調べた場合にも特徴的な変化があった。自分の採点した点数と他の被験者の点数が一致したときは活発化し、両者に違いがあったときは沈静化した。
この結果をみると、脳内の活動をみる限り、人間は他人と同調することを喜びと感じている面があると考えられる。ただしそれが良い結果に繋がるかはまた別の問題である。
その25に続く
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