「風邪の時は大量に汗をかいて熱を下げればいい」という発汗療法を実践されている方もおられるようですが、その行為は少々危険です。
風邪の初期や家族などと同居していて状態の変化に気付いてもらえる環境にある体力的に十分な大人が、経験則的にやられるなら自己責任の範囲で構わないと思います。
ただし一人暮らしの方や体温調整が未熟な子供、体力のない高齢者が行うのは危険です。突然、体調が悪化したり、症状をこじらせて肺炎などの危険な病気に繋がることもあります。
悪寒を感じたり発熱時に適度な室温を保ち体を温めることは必要です。しかし汗をかくために室温を異常な温度にしたり、着膨れするほど厚着をする必要はありません。ただでさえ体が弱っているのにさらに体力を消耗させるだけです。
そもそも適度な温度で安静にしていて汗がたくさん出てくるのは風邪の回復期です。体のウィルスがあらかた退治され、正常な状態に近づいたから暖かい部屋や布団・毛布、服装が暑くて汗が出るのです。せっかくそこまで回復しているのに汗だくになっては、無駄に体力が奪われ着替えの際に体を冷やす危険が生じます。症状を悪化させないためにも気を付けましょう。
昔いいと言われていたことでも年月を経て実証されると実は違ったということは多々あります。古い知識は出来るだけアップデートしましょう。
「風邪の時はお風呂に入ってはいけない」と言われることがありますが、実際はどうなのでしょうか。
結論としては風邪のときにお風呂に入ってもいいが、それぞれの状態や持病を考慮し(特に子供やお年寄り)、長風呂や高温の風呂は避け、湯冷めしないように注意するというところでしょう。
お風呂がダメだと言われていた頃に較べ、日本の住宅事情や暖房能力は格段に向上しています。浴室暖房なども普及し、湯冷めしにくい環境が整っています。
ご自分の体の状態を考えながら「疲れず、湯冷めしない」範囲での入浴であれば問題ないでしょう。
「マスクで風邪の予防はできない」「マスクをしていれば人に風邪をうつさない」などと言われることがあります。では実際はどうなのか。確認してみましょう。
①マスクは風邪の予防にならないのか
風邪の原因のほとんどはウィルスです。ウィルスは非常に小さくマスクの網目など簡単に通ってしまいます。高密度素材のフィルターがついたマスクでも同様です。装着時のかけかたにもよりますが、100%侵入を防ぐことは出来ません。これが「予防できない」と言われる根拠でしょう。
ではマスクを着ける意味がないのかというとそうではありません。ウィルスを通しても風邪を予防する効果はあります。マスクをしていればマスク内の空気は、マスク外と較べて「暖かく湿って」います。結果として鼻や喉の乾燥を防ぎ、ウイルスが好む低湿低温の環境を防ぐことができます。それが風邪の予防に繋がります。
また、風邪をひいた後も炎症が進むのを抑え、症状を緩和することができます。(ウィルスを外に出せないので逆に治りが悪くなるという説もあるようですが、室内なら分かりますが、外出時は着用した方がベターだと思います。)
②マスクをしていれば人に風邪をうつさないのか
マスクをしていてもウィルスは通過するため、完全に「人にうつさない」とは言えません。ただし、マスクを着けずにせきやくしゃみなどをするとその飛沫が3メートル以上飛び散るのに対して、マスク着用時は1.5メートル程度に抑えられるようなので、「うつしにくい」もしくは予防程度にはなります。
「人にうつさない」唯一の方法は外出を控えることだけでしょう。
薬局やドラッグストアーなどで売られている所謂「風邪薬」(総合感冒薬)は風邪の症状(熱、鼻水、せきなど)を緩和するためのものであり、決して治してくれるものではありません。
風邪の諸症状は、ウイルスを排泄(咳や鼻水)し、弱体化させる(=発熱)作業なのでそれを無理にとめることは風邪を治すための前段階を自分で長くしているようなものです。
お仕事など社会生活を送る上でどうしても症状を抑えなければいけない場面はあるでしょうが、その場合は総合感冒薬を飲むのではなく、鼻水なら点鼻薬を使うなど各症状専用のものを使いなるべく早くお休みになって下さい。