前回登場した経済学者のダニエル・カーネマンが提唱する人の特性に「焦点錯覚」というものがある。それは「人は何か情報が手に入ると、それを過大視し、他の情報を過少視してしまう傾向がある」という特性だ。
人は収入が増えれば、それまで買えなかったものが買えるようになり、「お金が入って、何かを買えば幸福を感じられる」という情報を得る。ただ、これを過大に重要視してしまうと他の情報にあまり目を向けなくなってしまう。
人の幸福にはお金以外の要素も大きく関係する。お金があっても人が直面する問題がなくなるわけではない。思いがけない事態に直面したり、ストレスにさらされて体調を崩してしまったりもする。そういった事実に目を向けず、特定の情報に偏ると必ずどこかで頭打ちとなる。
また豊かさと幸福度が比例しない別の理由として考えられるのは、満足感というのはあくまで相対的なものであるということだ。仮にあるものを持っていて、それと同じものがもう一つ手に入っても、必ずしも同じ満足感が得られるとは限らない(限界効用逓減の法則)。たとえ現状が豊かでも、以前と較べて豊かさが増していないと不満を覚えてしまう。
そういった傾向は、人間だけではなく他の動物にもみられる。
その17に続く
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