勘が狂う!?
プロの野球選手がバッターボックスに入り、次々に三振にとられていく。相手のピッチャーは下手投げの女性。
日本のテレビ番組でも行われた同様の企画が、アメリカでも行われていた。
1996年のアトランタオリンピックでソフトボールの金メダルを獲得したリサ・フェルナンデスはメジャーリーガーのボビー・ボニラとデヴィット・ジャスティスと対戦し、三振にとった。
2005年にはアテネオリンピックの金メダリスト、ジェニー・フィンチがメジャーリーガーのアルバート・プホルス、マイク・ピアッツァ、バリーボンズなどの強打者と対戦したが、誰も球にかすりもせず三振に倒れた。
150キロを超える剛速球をなんなく打ち返すメジャーリーガーたちが、110キロ程度のソフトボール選手の球を全く打てないのにはいくつかの理由がある。
そのひとつが「勘が狂うから」である。
一流のプロスポーツ選手でも、反射神経は一般の人とそう変わらないことは各種の実験で明らかになっている。
平均の反応時間は、プロスポーツ選手でも普通の人でも、だいたい0.2秒程度。
ピッチャーが投げたボールがキャッチャーに届くまでにかかる時間はその倍の0.4秒程度。
ピッチャーからホームベースまでの距離は野球で18.44メートル、ソフトボールで14.02メートルなので球速の差はあっても到達時間はさほど変わらない。
これだけ時間が短いと、ボールを見てからどう打つかを判断していては間に合わない。バッターがボールを打とうと思えば、どのくらいのタイミングでボールが手元に届き、どの辺りを通るかをボールを見る前に予測するしかない。
メジャーリーガーたちは、長年の訓練や経験でピッチャーの腕や手の動きからどういうボールがくるかを予測できるようになっている。それは意識して行うものではなく自動的に行われている。
プロといえど野球のバッターにソフトボールの投手が投げる球の予測は出来ない。予測能力が完全に奪われた状態でバッティングをしなければならないということは、ただ闇雲にスイングするしかなくなる。かすりもしないどころかバットを振ることすら出来ない選手がいたのは無理もないことだった。
その5へ続く
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