健常者402名を腹筋強化運動+教育プログラム群と教育プログラム群の2群に割り付けて2年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、両群間の腰痛発症率には差が認められなかったことから、腹筋強化運動は腰痛を予防できないことが判明。
ここで行なわれた教育プログラムというのは従来の生物学的腰痛概念に基づく腰痛教室のことです。いくら腹筋運動をしても腰痛の予防にはならないことが明らかになった実験結果。
急性腰痛患者186名を対象に2日間の安静臥床群、ストレッチ群、日常生活群に割り付けたRCT(ランダム化比較試験)によると、ストレッチ群は安静臥床群より欠勤日数が少ないものの日常生活群には及ばないことが判明。急性腰痛の特効薬は日常生活の維持。
痛みの許容限度内で、通常の生活をおくるのが最も有効な手段ということですね。
急性腰痛患者363名を対象に標準的治療群、運動療法群、シャム(疑似治療)群に割り付けて1年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、腰痛による欠勤率は運動療法群が最も高く、シャム群が最も低かった。急性腰痛に対する運動療法は無効。
急性腰痛(ぎっくり腰)には運動療法が効かないことが明らかになったランダム化比較試験です。世界各国の腰痛診療ガイドラインも急性腰痛に運動療法は勧めていないそうです。
腰部コルセットやサポートベルトの装着で腰痛を予防できないのは明白だが、これまで考えられていたように長期間の装着によって腹筋力や背筋力の低下を招く危険はない。腰部コルセットやサポートベルトはリスク(害)もベネフィット(利益)もない。ただしコスト(費用)はかかる。
小売店の資材運搬担当者9377名を対象とした6ヶ月にわたる前向きコホート研究によると、腰部サポートベルト毎日装着群、週1~2日間装着群、非装着群の3群を比較した結果、腰痛発症率も労災申請件数も減少しなかった。
食品流通センター勤務の男性90名を対象に、荷物の持ち上げ方に関する教育群、特注コルセット+教育群、非介入群に割り付けて6ヶ月間追跡したランダム化比較試験(RCT)によると、3群間の腰痛発症率と腰痛による欠勤日数に差は認められなかった。
最近の腰痛診療ガイドラインでは正しい物の持ち上げ方を教えてはならないと勧告しているそうです。なぜなら物を持ち上げる度に腰に注意を集中してしまうからです。これでは予防どころかかえって腰痛発症率を高めてしまいます。腰に良い正しい持ち上げ方はありません。テコの原理を利用した楽な持ち上げ方があるだけです。一般に言われている方法は腰痛予防のためではなく楽に持ち上げる方法だと考えるのがよいようです。
※RCTとは、臨床試験等におけるデータの偏り(バイアス)を軽減するため、被験者をランダム(無作為)に処置群(治験薬群)と比較対照群(プラセボ群など)に割り付けて評価を行なうこと。前向きコホート研究とは、大規模集団を長期間にわたって追跡調査し、仮説要因と疾病との関連性を分析すること。